中古住宅を購入するに当たっての事前調査として依頼されました。
まだ所有者の方がお住まいですので、仲介業者さんに立会いをお願いしての調査です。
購入前のためこのような場合は、建物に傷をつけることが出来ません。
よって調査方法は「非破壊検査」による「一般耐震診断法」になります。
建物を調査し、劣化度合いを加味した保有耐力を評価し、必要であれば改修提案まで行います。
診断のメリット=購入してから大きな欠点が発覚しては大変です。
出来るだけ契約前に調査して、大きな欠陥が無いか、丈夫な建物なのかどうかが判れば案して購入できます。
また、耐震補強に掛る費用も予め組むことが出来ます。
一般耐震診断で破壊を伴わず、どれだけ目視できるかが重要です。
目視できない部分は、今までの経験値を総動員して想定します。「ここがこうだからあそこもこうだろう」という想定が必要です。
たとえば、18年前の建物にしては、丁寧に柱頭にVプレート・筋交い頭部に平プレートが柱・桁それぞれに付けられています。
ここから見えてくるのは、当時住宅金融公庫を適応した建物ではないかと言う想定です。
であれば、構造中間検査もう受けているはずなので、少なくとも金物関係は当時の基準を満たしているということ。
柱頭がこのようなので、柱脚部もそのようであろうということです。
火打ち梁も適正に配置され、ボルトで固定されています。
ボルトにさびも無く、良好・垂木も煽り止め金具が見えます。
屋根下地にも雨漏れ・結露の痕跡はありません。
小屋束のカスガイ金物もあります。小屋束の筋交いも入っていますね。
断熱材も入れ方に問題がありますが、入ってはいます。
ここは北側のキッチン・浴室に近い部分で一番湿気がありそうな場所ですが、ドライですね。
断熱材も入っています。換気口も適正ですし、ステンレスで錆びもなし、クラックも気になるものは見当たりません。
基礎形状は、布基礎です。
外部は築年数なりに劣化が見られます。
劣化は劣化度を係数で表し、耐力要素を低減します。
つまり、外壁にクラックがあれば水が浸入している可能性があり、水が浸入していれば構造材が腐朽している可能性があり、白蟻被害に有っている可能性もあるということです。
実際に壊してみればそんな被害は無いかもしれませんが、一般耐震診断の評価は見えない分厳しく査定します。
写真では見えませんが、独立柱にはかなり負荷が掛っているようでタイルにクラックが入っています。
独立柱は脚部の固定が十分出来ないので、木造では扱いが難しいのです。
塀などもじっくり見ることで地盤の状況もわかるんです。
劣化度を加味した、保有耐力とに対する必要耐力の算定での総合評価は0.83 現行建物の基準法強度を1.0としています。
「震度6強にて倒壊の可能性がある」というレベルの評価となりました。
最低限の補強提案とともにご説明いたします。