いろいろある断熱素材 何がいい?

セルロース断熱での屋根断熱
セルロース断熱での屋根断熱

断熱工法からの選択

「断熱材はいろいろあるみたいだけど何がいいんだろう。」

 

 断熱材は住まいのランニングコストはもちろんの事、暮らしやすさ、過ごしやすさという毎日の暮らしに直結する部材なのです。

木造では柱や梁が多少細かろうが太かろうが暮らしやすさには直結しませんが、断熱材の厚みや、施工状態は毎日の暮らしに直結します。

住んでしまえば比較が出来ないのでどうであろうと慣れてしまうことかもしれませんが、確かに違いは存在するのです。

 

昨今の省エネやCO2削減の流れの中で、住いを建てようと考えている人で断熱材に関心を持つ方は増えてきました。


  断熱材を選定するに当たっては何を優先して考えるかで変わります。

 まず、「工法」により選択肢が狭まります。

 

 住宅の断熱工法は大きく分けて2つあります。

 「充填断熱」と「外張り断熱」

 

 「充填断熱」とは、壁の中に断熱材を充填していく方法で広く一般的に普及している施工方法です。

素材としてはグラスウールやウール、セルロース、ロックウールなど隙間にも詰め込みやすい繊維状の物が使われます。

 

 「外張り断熱」とは、壁の外部側に断熱材を張っていく工法です。

充填断熱と比較すれば新しい工法です。

外部に張っていくために素材としては板状の断熱ボードを使用します。

 

 もちろん一つの建物で両方の断熱工法を採用する場合もありますし、複合断熱といい充填断熱+外張り断熱という工法もありますが、基本的にそれぞれの断熱工法で使える断熱材は限定されます。

 

 


ウールを充填している屋根断熱
ウールを充填している屋根断熱

価格による選択

 次の選択肢は「価格」です。

 工法や断熱材により価格差があるので初期費用をどう考えるか、初期費用を抑える方向で考えるとおのずと使える素材は限られてきます。


 「環境性能」という選択肢もあります。

 製造エネルギー負荷やリサイクル率、環境負荷などでの選択肢です。

初期費用とのバランスを取りながらできるだけ環境負荷の少ない素材を選定するべきだと考えています。


ウールブレス Australia
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素材・工法を決める際のお話し

 

 断熱材の検討要素は耐久性、経済性、施工性、環境性能、防音性など多岐にわたりますがすべての要素を完璧に満たすものはありません。

それぞれの長所短所をお話ししながら優先順位を決めていくことになります。

 

 断熱材の種類とコストを簡単にお話しします。

 鉱物系     : グラスウールやロックウールです。

            コスト的には現在使われている断熱材の中では一番すぐれ、最も普及している素材です。


 プラスチツク系: 石油由来の製品でウレタンやスチレンボード、フェノール樹脂などで、 外張り断熱はこれらを使用します。

性能の高い物も多いですが製品コストも比較的高く、製造エネルギーも一番高い素材です。

 

 発泡系     : 石油由来の製品でウレタンフォームなどで充填断熱で、現場で吹付を行います。

 

自然素材系   : ウールやセルロース、コルクやウッドファイバなどで素材コストは高くなります。


素材コストとしては:自然素材系>プラスチツク板状>発泡系>鉱物系

製造エネルギートとしては:プラスチツク板状>発泡系>鉱物系自然素材系


製造エネルギーとはその素材を断熱材として使えるまでに製造すためにかかるエネルギーで、環境負荷が高い低いという評価にもなります。

 

 さらに細かく分類すると20種類以上になもなる断熱素材ですが、製品価格という選び方であれば鉱物系特にグラスウールが有利となります。

 

工法で決めるのであれば

外張り断熱 = プラスチック系

充填断熱 = 鉱物系、発泡系、自然素材系となり、

 

 


木の繊維 ウッドファイバー 北海道
木の繊維 ウッドファイバー 北海道

その他の注意点


 自然素材系は環境負荷の少ない優れた素材ですが、性能の割に価格は高めです。

国産の物は輸送に掛かるエネルギーも少なく環境負荷も少ないと言えますが、輸入に頼るウール等では輸送エネルギーなどでトータルに環境負荷が低いとは言えない物もあります。

 

 最近は省エネの流れから新しい工法や素材が開発され、また輸入されるようになりましたが注意しなければならないのは耐久性です。

壁の中に入れられた断熱材はそう簡単に交換はできません。

 これまで使われてきた普及品としての断熱材は、欠点や問題点が洗い出され、対処方法や施工方法が確立されています。また、現場サイドでも慣れているため施工ミスなども起こりにくくなっています。

 

 新しい素材の耐久性は机上の想定によるところが大きく、実際の使用状況での経年変化などの想定は難しいところです。

現場で吹き付ける発泡系に関しては近年フロンや代替えフロンの使用が制限された関係から発泡方式を変えたところ、接着性能の低下や吸水性の問題などが発生しました。

 これらの問題は改善されているようですが判断できるデータが乏しく不安が残ります。


 セルロース(古紙リサイクル)は紙を繊維状に戻すだけなので水や熱を使わない環境負荷のとても少ない素材ですが、中には輸入した古紙やどのようなインクが使われていたのかわからない物もあります。

採用する際には古紙の履歴が判る国産の物で植物性のインクのみつかわれていたものが安心できます。


 

 このように沢山の選択肢がある断熱材です。

予めハウスメーカーや工務店では使用する断熱材を決めているケースがほとんどです。

 

 建て主さんが迷わなくていいという利点もありますが、なぜその素材なのかを聞いて納得することも必要だと思います。

 またどういった暮らし方をしたいのかを考え自分たちの住まいに使う断熱材を決めていくのも納得のいく住まいをつくるには大切な事だと考えます。


サスティナブルな暮らしを目指すのであればおのずと使う素材も限定されてくるということです。


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