3・メンテナンスフリーな住まいとは  

メンテナンスフリー

 

住いにおいてもメンテナンスフリーという言葉がよく使われます。

 

 住いにおいて使われるときには、「手を加える必要が無いから手軽だ」という意味になるのだと思いますが、少しうがった見方をすると「手を加える必要が無いから手軽だ」=「メンテナンス出来ない家」と言うこともできます。

 

 メンテが出来ないということは、そのものが完成した時が最高の状態であり、日々劣化していくだけ、資産価値においても完成時が最も高く、年月とともに価値が下がることを前提にしています。

 

 高度成長期以後の日本の一般的な住宅はこの考えに基づいたつくりをしています。

ですから固定資産税においても築後22年で資産ゼロと査定されます。

税金がゼロになるのはうれしいことですが、せっかく思いを込めてつくってもローンが終わる以前に資産ゼロとは何とも寂しい現実です。

 

 しっかりつくった家は築年数を経て中古になっても資産価値があるように、国も重い腰を上げ、長期優良住宅制度や、性能評価制度を創設し、良質な住宅を普及させる取り組みを始めています。

 耐振性や温熱環境に優れた住まいをつくり、定期的なメンテナンスと修理の履歴をそろえることで、固定資産税やローン減税、都市計画税などが減免される制度が長期優良住宅と呼ばれる制度です。



セルフメンテナンスが大事

 国のこのような制度は、長寿命な家を目指して取組むつくりてにとっても住まい手にとってはありがたいことですが、制度の基準に乗っただけの家では評価年数が数年伸び、中古流通時に多少は有利になるかもしれませんが、50年後の価値や世代を超えた価値には結びつかないだろうと感じています。

 

 自然素材を多用した家はメンテナンスフリーの家とは対極にあります。

たとえば外部に使った木部は定期的にメンテナンスを行う必要があります。

 

 永く持たせるためにはオイルや柿渋などを塗ることが必要です。

古い町屋や旧家の板壁などでは50年という時間が経過した板張りが現在でも見ることが出来ます。

 

15mm程度の薄い板でさえメンテナンスを行うことにより一世代以上の歴史を刻み、深い味わいと共に新建材には無い独特な魅力を放ちます。

 

 漆喰の壁は、大掛かりなメンテナンスを必要としませんが、傷などは自分で補修することが出来ますし、ペーパーやブラシでこすると新たな表情が生まれます。

 

 新建材と言われる化学物質由来のビニールクロスや樹脂の素材は自分でメンテナンスはできません。新築の時が最高の状態で経年変化は劣化を意味します。

このような素材は古くなったらそのものを交換するしかないので自然素材の家に比べ、修繕費が当然大きくなると同時に、セルフメンテが出来ないので業者に依頼することが前提になり、工事費も掛かります。


メンテナンス計画が大事

 自然素材の家ではプロに依頼することももちろんできますが、その多くは自分で行うことが出来ます。

 

できれば趣味の延長として楽しみながらメンテが出来れば費用もおさえられ、自分で住いの状態を把握でき、何よりも手を掛けることで家に愛着が持てるのではないかと考えます。

外壁の杉板にオイルを塗るくらいならそれほど難しくはありません。

 足場は職人さんに頼み、オイルは自分で塗る。

困難な部分だけプロに依頼するという方法もあります。

 

 自然素材の家は経年変化とともに味わいをまし、それが価値になり、メンテナンスをすることによりさらに価値が上がっていきます。

欧米の家のように住まい手が自らメンテナンスをすることにより価値を高め、50年、100年と長持ちさせることは可能です。

 

50年から存在すればそれは地域の文化となるのだと考えています。

 

 

今後日本の家もそのようなレベルまで行くと思いますし、少しずつそんな家を増やしていきたいと思います。


自然素材の家を建てようと、新建材の家であろうとメンテナンスが必要の無い家はありません。

5年後・10年後・20年後にどのようなメンテナンスが必要になるのかそれはどの程度維持費が掛かるのか予め資金計画を考えていくことをお勧めしています。


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