国産素材を選択する意味

  木材は人材と読み替える

伐採見学会
伐採見学会

オールジャパンで行こう

 プロスポーツの世界では外国人の選手枠が決まっていることが多いですね。

1チームに2人とか3人とか、ワールドカップでは外国生まれの選手は帰化していないと登録できないようです。

 

 なんでかと考えると単純に外国人ばかりでは面白くなくなる。

ナショナリズムが生まれない。

お金で優れた選手を集めてもつまらない。

まあ確かにそうですね。

 

 住いをつくる木材はどうかというと今はほとんど外国生まれの選手が活躍しています。

カナダ・アメリカ・ロシア・北欧・ニュージーランド・・・

木材選手の場合は高いお金を払って優秀な選手を呼ぶスポーツの世界とは事情が違い、ただ単に安いから呼んでくるのです。

 石油エネルギーを膨大に使う輸送コストをもってしても国産より安いというのも不可解です。

いや必ずしも安くは無い場合もあります。

せっかく開発し、確保した利権を手放したくない商社の思惑もそこにはあるのです。

 

 実際には国産の方が安いということも多々ありますが、大きな流通の流れを急に変えられないという事情もあるようです。

まあいろいろある経済情勢の中の事ですが、そもそも暮らしの器となる住まいを外国の木で造るって面白くない。

住まいづくりの仕事をしていて単純にそう思うんです。

 

 和風建築をメインに謳っている工務店の建物さえ柱だけ国産、梁は外国産という面白くない状況を良く見かけます。

まるでそれが当たり前のように考えているというか、考えの無い工務店が沢山あることがこちらとしては驚きです。

 

 

 


皮むき体験
皮むき体験

一個人の暮らしの器には国産材

 2010年の資料では木材自給率は26%、現在は少し上がり30%近くになっていると思いますが7割程度は外国生まれなのです。

国産が無いのであれば仕方がないかもしれませんが、杉花粉をまき散らし、社会病になるほど国産材は余っているのに残念な状況です。

 

 もちろん使う側だけでは無く、山側にも供給に対して問題があり国産は使い難い状態になっています。小さな山林事業者や製材所が多く、「まとまって材料が出せない」であるとか、「供給に時間が掛かる」とか「小規模事業者では規格や品質に関して頼りない」などです。

 

 それに対し外国産はその国が国策として輸出を行い、品質や供給能力を確保したり、日本の商社が円滑な供給システムを構築したりしています。

確かに大量に同じものをつくるのであれば外国産をメインに使うことある意味ありなのかもしれませんが、「一個人の暮らしの器」をつくると考えるのであれば「面白くないつくり方」だと思うのです。

 

 国内では小規模な林業関係の事業者が多く、大量供給を求める大手業者には対応しにくい構図があります。

一個人の器という単位で木材を考えたときこそきめ細かな対応が出来る地域の林業者を使うべきなのです。

 小規模というそこを逆手に取り、山側と仲良くなり、良い品質の国産材を安く出してもらう。

住まう人もどこでどのように育てられ、どのような経過で住いに使われるのかを見ることで家づくりがまた楽しくなると思うのです。

それがまた愛着に繋がっていくそういう流れをつくりたいのです。

 

 


丸太の皮むき体験
丸太の皮むき体験

木材は人材と読み替える

 住まいは完成してしまえば国産材を使おうが外材を使おうが確かに代わり映えはしません。

特に柱や梁が室内に現れてこないつくり方では尚更です。

 強度についても的確な構造計画によれば国産材であろうが外材であろうが長寿命な建物をつくることは可能です。

 家の近く木の方が気候に合っていてふさわしい。そんないい方もありますが、薬剤を使い防腐したり、合板を使いがっちりと固めていくつくりではそれもあまり意味のあるいいい方とは思えません。

 

 ではなぜ国産材、地域の材を勧めるのか?

そこに人材がいるからです。

国産材は先代、先先代の方が木を植え育ててきました。そして今もその現場で働く人がいて、製材する人がいて成り立っています。

 

住まう人にも山の顔が見え、山の人にも住む人が見える関係をつくっていけば「面白いつくり方」が出来ます。

 

 たとえば私の事務所では林業地をハイキングしたり、伐採を見学したり、皮を剝いたり、製材所を見学したりと住まいに使う木材のふる里を知ってもらうイベントなどを林業者と一緒に行うことで山側の人たちもより良い材の供給に協力してくれます。

生産者の顔が見える野菜を買うのと同じ、安心してつながることが出来る人たちと安心できる素材で家をつくる。

そんなことできっとお家が好きになるし、オールジャパンの「面白いつくり方」で「楽しい住まいづくり」が体験できると考えています。

だってすぐ近くにたくさん木があるんです。

 

 


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