実際的な土壁の使い方(途中です)

実際に土壁を住まいに取り入れる具体的な方法

 耐震等級2とか3とか温熱等級とか建物を性能値で評価するシステム的な考えは今後ますます増えてきます。

性能で建物を評価することは望むところですが、残念なことに昔ながらの土壁の施工工法では建物の耐震性能を上げていくことには限界があります。とはいえ伝統工法にこだわればまた違う考え方となります。

耐震基準での性能を上げて行きながらも土壁を使う方法は2つあると考えています。現実的に一般的な住まいのつくり方で取り入れることを考えてみます。

1:外断熱と耐力面材で壁の中をフリーにして真壁として土壁を使う。

2:内断熱と耐力面材+筋交い併用で大壁として土壁を使う。

今回の現場では2番目の大壁としての施工を行っていますのでご紹介します。

左の写真が木摺り下地というもので伝統的な手で竹を縄で編んでいく竹小舞と違い大工さんが電動工具で施工できます。

 また竹小舞の場合は壁に取り付けるために通し貫きという竹を留め付ける部材が必要になりそれが耐力的にも効果がある反面、筋交いや面材ほどの数値が出ないので伝統的で理想的な下地ですが普通に使うにはハードルが高くなりすぎてしまいます。


下地の様子 断熱と耐震を考慮して壁厚を確保する

 この写真は室外から撮っています。

木摺りが室内側にあるのが分かります。伝統的な方法では竹小舞またはこの木摺りは柱のほぼ中央に入るため、写真にある筋交いという斜めの耐力部材を入れることができなくなります。

そして何よりこの柱の厚みの空間を利用して断熱材を仕込むこともできるようになります。

 

 この施工方法が温熱性能も確保し、耐力も確保しながら使う土壁下地のつくり方の一つです。

 

 ちなみに普通断熱材は中から入れますがこの場合は外から入れます。

そのため壁内に土壁を通過した湿気は侵入することになるので結露対策などは使用する断熱素材を含め考えることが必要です。

湿度が壁内から抜けない素材や施工方法は結露において使わないことが原則となります。

 

 今回は壁断熱としてリサイクルウールを使います。

断熱材選定は土壁や木材に近い透湿性能を持つものを使うか、壁に水蒸気を入れない性能の物を使うかどちらかになりますが、より使いやすいにはウールやセルロースや木質繊維系の断熱材で結露対策を考えることだと思います。


外から中から厚みを確保する

 土壁は下地への付着が重要です、部分的に土が付着しにくい部分はジュートやシュロ縄などでの補強が必要です。

また割れが出やすい柱の位置などには見切り材が必要です。

 

 こんな感じで中からと外からで下付けを行います。中外から付けることで厚みが確保されるのとがっちりと木摺りの間に土が食い込みしっかりとした下地が出来上がります。

 片面塗りという方法もコストダウンの考えでは正解ですが厚みを確保することはできないので木摺りを組むのであれば両面塗りをするべきでしょう。

片面でよければもっと簡単なラスボード下地なども有効です。

 

 


乾燥させる

下塗りをし、追っかけで2回目を塗り、その後乾燥させます。

感想を早めるためには単純に工業用扇風機を使ったり住宅の室内であればストーブやヒータも有効です。

しっかり乾燥させたほうが仕上げでの収縮割れが少なくなります。

ざっくりと割れた質感を出したい場合など早めに仕上げる方法もありますが、

そのあたりは土の具合や藁の混ぜ方など左官屋さんの感覚に任せるしかありません。

 

次の段階は外からウールを入れ内部は中塗りを入れます。

 

今回はリサイクルウールを100mm入れられるので、土壁の温熱性能を考慮しなくても長期優良の温熱環境も整えることができ、面材と筋交いにより耐震等級も確保できます。

からの真壁でなければとか通し貫きでなければという「こうでなければいけない」「こういうものだ」という考えではもはや土壁はつかえない素材になってしまいます。

 

を使う仕事は必然的に乾燥が必要になり工期が長くなります、そのことによるコストアップをどう抑えていくのか強制的に乾燥をはかる方法も有効ですし、試行錯誤しています。

今後断熱充填から仕上げ編に続きます。少々お待ちください。12.24

 

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