時節がら断熱性能が引き上げられたり、消費エネルギーの基準が設けられたりと住まいのつくり方、素材の選び方、建築コストに影響を感じています。
特にコストの上昇はとても大きな問題です。
設計は工事を請け負うわけではありませんが依頼者様の予算の中で納めなければならないという現実があります。
限られた予算をどう配分するのか、そのために建物の面積を希望よりも小さくしなければならないかもしれません。
性能を上げしかもコストを落とすために不安なある素材も使うべきなのか、コストはかかっても今までのように自然の生態系の中にある素材を主に使いながらいくのか、ここのところ人に話を聞いたり、過去を振り返ってみたりしながら今後の方向性に葛藤がありました。
なぜなら断熱素材により同じ性能が得られてもコストが違うからです。
今メインに使用しているのは植物繊維のセルロースファイバーです。
製造にかかる熱エネルギーもとても小さく自然循環系の中にある素材ですがローコストではありません。
他に自然素材系ではウールや木質繊維系断熱材もあります。
輸送コストや製造エネルギーを考えたときにやはりセルロースが環境負荷が小さく性能も確保できる優れた素材なのだと思います。
コスト重視で考えるならばグラスウールや吹付けウレタンなど鉱物質やケミカル系の素材がありますが製造にかかる熱エネルギーが大きかったり、安全とはいいながらも不安な化学物質で製造されています。
リサイクル系ではポリエステルなども断熱素材として優秀ですが需要が少ないのでコストは高めです。
そこでこだわりの再確認をしてみました。
なぜ自然素材を優先してきたのか
「ごあいさつ」にあるとおりですが振り返るとその理由は
「健康的な生活を送っていただきたいこと、より活力あふれる人生が送っていただきたいこと、そのためにつくる側で大切なことは、きちんとしたものを提供する」ことだと考えていました。
そこは今も変わりません。
このことを実現するために、素材を吟味し、手間をかけ、家づくりから健康的な暮らしにつながることを目指してきました。
化学物質過敏症やシックハウスは子供たちの健康に大きな影響を及ぼします。
生態系の中の素材、昔からつかわれていた安心できる素材を使いたいと考えています。
自然素材で家をつくるということは住まう家族のくらしの環境が整うこと以外に地域の環境を守ることにつながります。
素材を使うことで循環する里山の環境も整い、結果的に環境を守ることにもつながると考えています。
これって今思うとやっぱり仕事をしていくうえで捨てられない考えだと改めて思いました。
家を建てる場所の近くで育った木材は、地域の環境になじみ心地よい家になると思います。
また、輸送にかかるエネルギーやCO2を極端に減らすことできる非常に省エネルギーな建材となります。
木材は家に使われることで二酸化炭素も固定化し、植林されることで森林は雨水をとどめ、浄化し、二酸化炭素を蓄積し、酸素を供給してくれます。
また少し大きな流れで考えると健全な森林から流れたミネラル豊富な川の水は豊かな近海の環境にも寄与すると言われています。
ほんのわずかな利用でも積み重なればこのような環境循環の中で暮らしがつながればいいと思います。
そのようなことを整理することで方向性が再確認でき、今後もぶれずにお話しできそうです。
結果は
「生態系の中の素材、昔からつかわれていた安心できる素材を使いたいと考えています」
ならばやっぱり断熱材は基本的にセルロースファイバーを使っていきます。
ちなみに屋根断熱は今までより10cm厚くして30cm 壁は10.5から12.0cm、今までと同じとしていきます。
またせっかく使うならば
「環境サイクルをしっかりした考えで支えている林業者の木材を使いたいと考えています。」
地域材なら何でもいいではなく、考え方の近い方々の力を借りて考え方の近い方々の住まいを設計させていただけたらいいと思います。
コストはとても大きな問題ですが私にとっては安心できる素材の提供が先に来ることだと改めて思いました。
合理的な構造や木材の調達方法、間取りの工夫で費用を抑える工夫を今まで以上にしていきながらさらなる性能向上を目指し、費用もお願いすることがあるお思いますが丁寧に納めさせていただこうと考えています。